お久しぶりです~。さて、1部5章4話、5話。嵐のコンサートですね。
あなたは私たちの爆弾だから
「一織を信頼しきれないまま、歌うことに執着する陸」と「陸を評価するからこそ万全の状態で歌って欲しいんだけど、それをうまく伝えられない一織」のやりとりがほんと、しんどい。
お願いだから、黙っててくれよ!
みんなに迷惑はかけない……!
死んでもステージで踊り抜くから!
……お願い……。
陸は事情をみんなに知られたらセンターを下ろされてしまう、下手をするとグループ脱退を命じられると怯えていて、だから必死なんでしょうね。
おそらく小さい頃からずっと、あれは駄目、これも駄目、だって具合を悪くしたら大変でしょう、と諭されて、色んなことを諦めてきたんだろうと思います。家族が自分を愛し、心配してくれているからだとわかっているからこそ、残念でも受け入れてきたんだろうな。
そういう意味では、まだ一織との心の距離が遠いからこそ、陸はこうしてつっぱるんだろうなぁと思います。自分自身が心配されていると思っていない。一織が陸を問い詰め、皆に報告しようとしているのは、体調に問題のある自分がIDOLiSH7の足を引っ張ることを危惧されているからだと信じ込んで、「ちゃんとできるから、黙っていて」と懇願するんですよね。
あなたのボーカルは、
IDOLiSH7の武器です。
最大の武器と言ってもいい。
あなたさえいれば、
IDOLiSH7は
いつか必ず、日の当たる場所に出れます。
あなたのボーカルは武器になる。
それゆえに……。あなたの抱えているトラブルは、
グループ最大の爆弾にもなりかねません。
下手をすれば、私たちの命取りになる。
そこで一織が言うのもこれですもんね……。「才能あるあなたを中心に据えて成功したいからこそ、あなたの体調はあなたひとりの問題ではない」と本人としては伝えている、んだけど、たぶん根っこにある前提を共有していないから、陸にまったく伝わってない……。読んでてめちゃめちゃもどかしい……。
すでにがっつりマネージメントに噛んでいる一織からすると、陸を外すことはあり得ない。陸を中心に活動するビジョンが固まっているからこそ、陸の体調について踏み込まなければと思っている。
でも陸は前述の通りそこをわかっていない。陸にしてみれば、メンバーの一人にすぎない一織が陸のボーカルを評価していることは、嬉しいことではあるけれど安心材料にはなりませんものね。
このあたり、一織はやっぱり他人の気持ちを汲み取ることが下手な子なのだなぁと思います。ここで一織が、陸がなにに怯えているかを理解して、ちゃんとかみ砕いて説得できていたら、倒れることにはならなかったかもしれない。
でも、優しくて誠実な子なんですよね。陸を説得できず、逆に必死に懇願されて、誰にも言えないまま、秘密を共有してしまう。
(余談ですが、一織が陸を「爆弾」と呼ぶのはここが初出ですよね。危険物としての「爆弾」呼ばわりが、ブラホワ前の会話で鮮やかにひっくり返るの最高。)
嵐に消えた歌声
ライブ当日。台風が近づいて大荒れの天気の中、ライブ前から調子を崩しながらも笑ってごまかしている陸を見ながら、一織がどんなにか不安だったかと、想像して毎回わーんってなるとこです。
IDOLiSH7の成功のためにも、ライブに陸の歌声は欠かせない。陸自身もやりたがっている。でも陸が歌いきれずに倒れたり、倒れないまでも実力からほど遠いパフォーマンスしかできなかったらIDOLiSH7は初手から躓くでしょう。もちろん陸自身の身体のことも心配だ。でも陸は自分の言葉をちっとも聞き入れてくれない……。
自身もステージに立ちながらこの葛藤を抱えている17歳、ほんとさぁ……。2時間半の路上ライブのあいだずっと、笑顔で歌って踊りつつ、陸を心配し、さりげなくフォローしながら、きっと内心で色んなシミュレーションもしてたんだろうな。たった一人で。うっうっ、モンペは胸が痛い。
ラストの曲前のMCでも息切れした陸をフォローして、体力を使い果たして倒れる前に後ろに下げようとしても聞いてもらえず。
……っ、本番のライブと……、
同じだけの時間……っ、
ぜっ、ぜぇ……、……歌えたろ?
まだ歌える……。オレは……。
……っ、オレは、ステージに立てる……!
ボロボロの陸にこれを言われて。
「ライブができるのか」と自分が挑発したせいで、歌いきれると証明しようとした陸に無理をさせてしまったのか――とか、そんな考えも一織の頭によぎったんじゃないかなとか想像してしまいます。
さて、ライブはどうにか終わり、観客に挨拶をして、おそらく裏に引っ込んですぐ、陸は呼吸困難を起こして倒れる。
一織は即座に対応します。陸の荷物に「発作止めの吸入器があるはずだ」と言って、それを持ってこさせる。「七瀬さんは呼吸器の病気を患っている」と一織が伝え、ようやく陸の事情が周囲に知れる。
フォローがなーーーい!!!!
でさぁ……この次の話とその次のサイドストーリーの内容。知られたら見捨てられると怯えていた陸に、マネージャーやメンバーみんなが、持病の件を隠していたことに怒りつつも、持病があっても陸が大事だし必要だ、一緒に頑張っていこうと伝え、あらためて強い絆で結ばれる話です。いい話だよね。感動的ですよね。うん。
でもさぁ……。
陸の事情にいち早く自分で(ここ重要、ハプニングでたまたま知ったんじゃなくて、全員同じ状況で一織だけが目ざとく陸の異状に気づき、調べ、確認し、本人を問い詰めて知っているんですよ?)気づきながらも、陸に懇願されて誰にも言えず、周囲に知られないように支え、倒れたときもすかさず適切な処置をした17歳の! フォローを! しろ!!!(モンペのさけび)
えっ総スルーですか!?と初見でめちゃめちゃびっくりした覚えがあります。「一織だけが気づいていた」「一織が一人で抱え込んでいた」ことに、ちょっとでいいから言及してくれ~! お叱りでもいいし! いないところでの噂話でもいいから! 「大人に相談しろ」もないし、「大変だったな」もない。みーーーんな陸にかかりっきり。いや、わかりますよ、ここの話、陸視点だし。陸にフォーカスするところですよ。わかるのよ。でもモンペなので。ちょっとはねぎらってあげてもいいじゃん!!!!! せめてサイスト!!!!! てなる。
一織本人も、なんにも言わないしさぁ~。大人たち含めて自分以外誰も気づかなかったことへの恨みごとも、陸に口止めされて心配したり苦労したり大変だった愚痴も、なーんも言わない。
和泉一織というキャラクターが、そこをフォローされなくても問題を抱えない、わだかまりを持たない性格だから、こういう話の流れになるんでしょうね。そういうところが好きなんですけど、ほんと不憫というかなんというか……。しんどいぜ……。
今回はこのへんで。
次あたりミューフェスを語れるだろうか。