※ぷらいべったーより転載
5-13-2 告白の刻 感想
告白しようとしてうまく話せなくてラーメン屋行脚する一織かわいい。
そして、ただただオモシロ可愛いコメディ的導入だと思ったら、ピタゴラがラーメン屋で喋るのが羨ましかったから、そうやって話してみたかったからだなんて……いじらしすぎて切なくていきなりウッてなってしまった。
リラックスするためにりっくんに電話してうっかりエピソードねだる一織……って、えっ、あの、これ、公式? ほんとに?? 我々の妄想じゃなくて??? 狼狽えるわ。一織の年下っぽさが全開でやばかった。打ち明け話の前にぱっとこの行動に移るあたり、自分のリラックスルーティンを把握してる一織、有能。そしてかわいい。絶対これまでにもりっくんの最新和みエピをリラックスに活用してるじゃんな?
一織のお小言をBGMみたいに聞いてるりっくんと、りっくんの可愛いうっかりでリラックスできる一織、いいコンビですね。りっくんが、もー、一織のやつ……と言いつつ、心配してくれてるの好き。
そして打ち明け話。
いやもう、ねえ……。増田俊樹さんの演技が素晴らしすぎるのよ。「……。」にのせられた吐息、呻きの多彩さ。その揺らぎ、おびえ、決意、ためらい、悲しみ、覚悟。ものすごく表情豊かで、たまんなかった。
「私はマネージャーに頼み込んで」
ここで「頼み込んで」という言葉を使うのがさ、潔くて好きだし、ここからもう、一織の覚悟とか、伝わってくるなと。マネージャーはちっとも悪くなくて、自分が要求したことなんだというのを強調する言葉遣い。そういう言い方を選ぶ一織の潔癖さが好きだし、あくまでも自罰的なところ、少し切ない。
「オレのことか……。」
「ち……、違います……っ」
「…………。」
「……いいえ、違いません。
私は兄さんに反対されるのが、
怖かったんです。」
もうここで泣いてた。
結局それは三月のことだ、というのを、三月が知ればショックを受けるし、一織にもそれはわかっているし、三月を傷つけたいわけじゃない、だから咄嗟に「違います」が出る。でもそれはどうしたって嘘なんだよね。
嘘をつかないと決めたから、ちゃんと、違いませんと言えた一織の、誠実さとか、覚悟が、好きです。
一織の告白。
ようやく。
本当に、本当に、ようやく、言えたね……。
アイナナにハマって、最推しが一織になって、この子の切ない願いのことを知ってから、本当にずっと、私はこの日を待っていたのだと思います。
彼自身の言葉で、彼の本当の望みのことを、誰かを支えたい、輝かせたいという夢のことを、それが、それこそが、うまれつき何でもできる有能な男の子の、人生かけて憧れ抜いて、ようやく掴んだ夢なんだということを、語って欲しかった。
兄が好きだから、陸や紡の懸命さに惹かれたから、支えてるんじゃない。愛や優しさの発露じゃなく、ただ、そうしたかったんだと。誰かを支えさせて欲しかった。素晴らしいものを見出し、輝かせる、そういう自分でありたかった。
かつて、おまえの夢を追いかけろと言われてはねつけられた、でも一織はそのときまさに、自分自身の夢に手を伸ばしていたんだということを。
……なんだかまだ信じられないや。
ほとんどサイドストーリーとラビチャ・ラビTVなんですよ。一織の夢の話。あちこちの話にちりばめられる、一織の本当の夢や願い、過去の挫折の話を拾い集めて、ああ、この子のことが好きだなぁ、誰にもちゃんとは伝わっていない、この切ない願いのことを、傲慢にすら見える言動の裏にある根深い自己否定のことを、いつか言える日が来て欲しいなぁと思っていました。
だから今日は本当に嬉しい。
よかったね、一織……。
「口を挟むこと」が――したいのだと、言葉を尽くして、三月に語る場面が好きです。頑張って素晴らしいものになれば神様が微笑んでくれて報われるなんて嘘で、選んでもらうための戦略的な見せ方が必要不可欠。そして、自分ならそれができる、そのやりかたがわかる。丁寧に伝えながら、隠しきれない興奮に少しだけ声が上擦る、この演技も最高だったし、文章もすごい。
指を使った例え話。二人の立ち絵から、夜空の背景画。ここの文章、惚れ惚れしてしまう。台詞の応酬だけで情景が浮かぶこの表現力ですよ……。けして冗長でなく、説明的すぎもせず、二人の会話の、二人らしさから1ミリも逸脱しないまま、的確に、理解させる言葉たち。天才の所業だと思う。
でも、がむしゃらに上を目指していた頃は、三月にこの言葉は届かなかった。努力を放棄してインスタントな結果を狙うような、不実なやり方に見えただろうし、反発しただろう。それを、聡明で、年下の、血の繋がった弟に言われたら、きっと腹を立てていただろう。
本人も言ってるけど、それも分かるんですよね。それがわかる三月だということが、私たちにもわかる。物語る力だなぁ……。
これまでの三月は、一織のことを「おせっかい、世話焼き」ととらえていたと思うんですよね。他者に口を出すのは余力でやっていることだと、趣味嗜好から来た行動だと。だからこそ一織は、今回この場面で、言葉を尽くして三月に訴えなければいけなかった。好意から、ついでに、やっている手出しではなくて、これこそが夢なんだと。本気で取り組んできたことなのだと。その場での思いつきではなく、調べて学んで分析して考えて考えて、プロの仕事として、果たそうとしているんだと……。
「私の情熱で、私のプライドなんです。
私の大切な人たちを、成功に導くために、
あらゆる人智を尽くすということが。」
この言葉。この声音の力強さ。大好き。
そんでさ……。
「IDOLiSH7は、私の全てです。
IDOLiSH7を失くした時に、私も全て失います。
そのくらい、大好きです。」
この、最後の一文で、震える声。ここから、少しずつ、涙混じりになっていって、それでも止まらない言葉。もう、泣けて、泣けて、どうしようもなく泣けて、今もこの文章を書いているだけで瞼が熱くて視界が滲みます。
ずっと、同級生と同じようにできなかった。みんなが楽しむことに懸命になれなかった。なんでもさらっとこなせてしまうから、歯ごたえがなくて、どれだけ賞賛を浴びても空虚だった。友達が欲しかったけれど、同じようになれなくて、距離を縮められなくて。きっと、ずっとずっと寂しくて、そういう自分のことが好きになれなくて、でも「なんでもできるからつまらなくて寂しい」だなんて言えるわけもなく。
「……っ、こんなに楽しい時間はなかった……。」
「兄さんみたいに友達もいなくて……、
夢見ることなんて、ないと思ってたけど……、
……こんなに……、こんなに……っ」
「……ひとつのことに、夢中になれた……。」
なんかもう、もうほんと、こんな、赤裸々に、必死に、一生懸命に、語ってくれるだなんて思ってもみなかったんです。IDOLiSH7になるまでの一織が、抱えていたもの、満たされなかったもののこと。
知っていたつもりでした。きっとそうだろう、そういう子なんだろうと思って、いつか、語られる日のことを待っていました。待ちながら、少し不安だった。5部の更新が始まってから、怖かった。私の好きな和泉一織というひとは、私が勝手に作り上げて、彼に押しつけた、虚像ではないだろうかと。私にとって好ましい「在り方」の枠に嵌めて、その幻想だけを愛してきたんじゃないかって。
ぜんぶ杞憂でした。彼は私が想像していたそのままの子で、そうだったことを教えてくれた。断片をもとに組み立てた想像ではなく、たしかな言葉で、そこに存在してくれた。
私、こんなに幸せで良いのかなあ。
この物語に、この場面に、辿り着いてくれてありがとう。辿り着かせてくれてありがとう。感無量です。好きでいて良かった。
「……私を嫌わないで、兄さん……。
私を許してください。私を許せなくても、
どうか、IDOLiSH7を辞めたりしないでください。」
ボロッボロに泣いた。読むたび泣いてます。オーバーキルすぎて死んでしまう。
だって、だってさあ、りっくんにも大和さんにも "私を嫌ってもいい" って言ってた子が、最初に、嫌わないでって、許してくださいって、泣きながら、兄さんに縋れたじゃん……。なんにも取り繕わないで、子供みたいにさぁ……。
そのうえで、それでもどうしても嫌われたとしても、許せなくても、止めないでって、私からIDOLiSH7を取り上げないでって、悪魔に魂を売ってでも手放せないんだって、泣いて、泣いて……、……もうだめだほんと死んでしまう……。
「……できる弟に、嫉妬もしない。」
これね。この台詞。嫉妬。たぶん、三月はずっと、この言葉を一織にぶつけられずに来たんですよね。彼のプライドと、彼の優しさが、言わせなかった。言わないのに、その感情は否定しがたく存在して――それが一織を傷つけていたことを、三月は知ったんだろうなと思います。乗り越えてようやく、認められて、言えたんだろうな。その思いがあることを否定するんじゃなく、確かにあった気持ちだけど、もう、乗り越えたよって。
おめでとうと、嬉しいと、格好いいと、三月が言ってくれて良かった。言ってくれる三月で良かった。一織が好きで、大切だっていう感情を、この場面で、三月が一瞬も手放さずにいてくれて本当に良かった……。嬉しかったです。よかったね、一織……。
隠し事してごめんなさいって子供みたいに謝る一織がさぁ……、いじらしくて、せつなくて。アイバム一織のラビTV2話の、ちいさないおりと重なりました。悪い子でごめんなさいって謝るあの子が、そのままずっといまの一織の中にいるんだよね。
はあー…………。
すごかった…………。
信じて、待っていて、良かったです。
一織の隠し事について、どんな辛い展開が来ても耐えようって思ってましたけど、まさかこんなに、一気に、まっすぐに、語って貰えるなんて。
まだ気持ちがふわふわしてます。
この先の展開についても言いたいこと山ほどありますが、語れるメンタルじゃないのでそれはまた、おいおい。
アイナナにあえて、和泉一織を好きになって、良かった。
都志見文太先生、増田俊樹さん、かくも素晴らしい文章を、演技を、本当にありがとうございます。